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奇想天外な物語で大阪の基層描く
2009年3月29日日曜日,9:08
デビュー作『鴨川ホルモー』では、京都の大学生がオニを操って戦った。次の『鹿男あをによし』では、奈良の鹿がしゃべった。奇想天外なストーリーの小説で人気を博している作者が、今度は大阪を舞台に突拍子もない物語をつくり出した。少々長いが、一気に読ませる力作である。
作者が描いているのは、大阪という街の基層、あるいは大阪人が根底に持っている「精神性」のようなものである。豊臣秀吉以来の大阪の歴史をひもとき、歴史上の人物の名前を巧みに織り込みながら、それらに迫っている。
熱狂的な阪神ファンや通天閣といった、よく知られた「コテコテの大阪」は登場しない。随所に描かれるのは、空堀商店街でタコ焼きを作るおっちゃん、辰野金吾に代表される近代建築、張り巡らされた水系といった、地味ながら等身大の大阪の姿である。地図を片手に読んで、大阪探訪の気分を味わうのもいい。もしかしたら本作は、何よりの「大阪ガイドブック」であるかもしれない。
と、少々まじめに解説してしまったが、真骨頂はなんと言ってもナンセンスさにある。「大阪国総理大臣」の登場に噴き出し、読了後に大阪城天守閣をニヤニヤ眺めてしまうのは、私だけではないはずだ。作者の想像力(妄想力?)に脱帽である。
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