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ブライアン・ウィルソンは、ジョン・レノンと同じ様な、ヒッピーじゃないか!
2008年11月16日日曜日,10:36



ビーチ・ボーイズの中心メンバーだったブライアン・ウィルソン。人は彼を<孤高の天才>と呼びます。

何故そう呼ばれるのか…。

それは、時代が彼の天才を読むことができなかった。時代が少し彼に付いて行くことができなかった。そのような反省の意を込めて、<孤高の天才>と呼んでいるのではないかと思います。

「天才と何とかは紙一重」と、よく言いますが、そんな状況下に居た彼は、世界を夢中にさせるような音楽を作りましたよね。しかし、それからが彼の苦闘の始まりです。

60年代から、今日までの彼のことを、まとめて音楽にすると、この3曲な按配ではないかと思います。小麦色の肌のサーファー・ガールも40年も経てばババァになるわけですが(笑)

 ビーチ・ボーイズの「Sufer Girl」。それから、最近発売されたばかりの、ブライアン・ウィルソンのアルバムのタイトル・トラックで「That Lucky Old Sun」。

そして、同じアルバムに入っている曲で「Forever She'll Be My Sufer Girl」。これには、「永遠のサーファー・ガール」というタイトルが付いていますが、歌の中で、1961年の出来事と言っていますよね。

同じ女の子をずっと想い続けているわけですよね、ブライアン・ウィルソンは。40年以上経っても、このスタイルは続いています。

若い人達は、ブライアン・ウィルソンの歌を聴いて、「歌手じゃないよね、この人は?」、なんて思っているかも知れませんが、そうなんですよ。彼は元々ミュージシャンですが、真ん中に立って、リード・ボーカルを取るような歌手ではなく、ではブライアン・ウィルソンのどこが偉いのかと言うと、<頭の中にあるコンセプト>が偉いんですよ。

彼が作りだしたコンセプトが、やっぱり凄い。そして、時代は彼を読むことができなかった、ということです。

僕等も読むことができなかったわけですから、彼はどういうような男なのか、というのを、後になって、ブライアン・ウィルソンがソロ・アルバムを時々発表してくる度に、耳を傾けるわけですが、最新作『That Lucky Old Sun』ではっきりと分かりましたよね。

アルバムのタイトルにもなった「That Lucky Old Sun」という曲は、アームストロングだとか、フランキー・レインなどの、昔の人達が歌った、<黒人霊歌>的な曲なんです。

これをブライアン・ウィルソンが聴いて、「あっ、これは自分の人生みたいなものだ。自分の今回のアルバムはこのタイトルにしよう」、と思ったそうです。

「太陽はいいよなぁ、俺達は汗水垂らして働いているのに、太陽は天国の周りを回っていればいいんだもんなぁ」、というこの歌を聴いて、僕は「あっ、ブライアン・ウィルソンって、ジョン・レノンと同じ様な、ヒッピーじゃないか」、というような感じもしました。

そして、今回のニュー・アルバムを聴くとね、ビーチ・ボーイズの音作りの種明かしや、自分がどうしてノイローゼと言われ、自分の兄弟にまで嫌われたかというようなことが、ちゃんと綴られているんですよ。

そのブライアン・ウィルソンは、ビーチ・ボーイズとしてスタートするのですが、ビーチ・ボーイズの、あの絵葉書のような音楽は皆さんもご存知だと思います。
「Surfin' USA」とかね、色々ありましたけど。
ところが、1965年に、彼はメンバーと一緒にツアーをしなくなるんですよ。この事については色々あると思いますが、僕が推測するに、ツアーに出たりすると、ビーチ・ボーイズは滅茶苦茶な生活をするんですよ。それにブライアン・ウィルソンは付いていけないわけです。

乱チキ、乱交、乱薬といった、『~ドラッグス・アンド・ロックンロール』の世界に付いていけなくなり、彼はノイローゼになってしまい、スタジオにこもって音楽を作り始めるんですよ。

そしてビーチ・ボーイズのメンバーがツアーから帰ってきたら、お兄ちゃんのブライアンが、「今度、新しいサウンドこれでいくから」と、聴かせるわけです。そうすると、皆は「なんだこりゃー!」、と言うんですよ。「あんた、これ犬に聞かせる音楽を作ってたの!?」といった、酷いことを言うんです。

まあ、メンバーの中に兄弟も居ますから、理解してくれる連中も居たりして、とにかく『Pet Sounds』というアルバムを発表しました。そのアルバム、そこにこそ、我々が読めなかったブライアン・ウィルソンが居るんですね。


有名なアルバム『Pet Sounds』から「Wouldn't It Be Nice」、「God Only Knows」。これを、世間の人達が聞くと、「もうビーチ・ボーイズは終わりだ」、と思っちゃったわけですね。僕等も思ったわけです。というか、ノレなかったわけですよね。だから『Pet Sounds』は全然売れなかったのですが、平たく言うと、「Surfin' USA」のような音楽がビーチ・ボーイズですよね。

どういうことかと言うと、「Surfin' USA」というのは、元はブライアン・ウィルソンの音楽ではなくて、街に流れている、チャック・ベリーなんかのロックンロールです。そのロックンロールに、独特の、ブライアン・ウィルソンでしか作れないようなコーラスを、ロンクンロールのメロディに入れることで、まるで違うものにしちゃったわけですよね。ところが、そんなことではもう世の中駄目だろうと、思ったわけですよ。それに、ライバルのビートルズは凄いことをやっているわけですよね。焦りを感じたブライアンは、このような曲を作ったということなんです。


聴いていて思い出したのが、60年代に、<イン>という言葉が、凄い流行語になっているんですよ。要するに、サイケデリックな世界というのは、自分の中をトリップする世界でもあるわけですよね。

そういったのも兼ねて、「イン」と言うと、ナウいとか、中に居るという感じで、昔は流行語だったんですよ。ラムジー・ルイスのね、「The in Crowd」というヒット曲がありました。

「The in Crowd」というのは、『in』な『Crowd』なんですよ。だから、俺達は、『ナウい連中』という意味ですかね。あと、日本でも、渋谷のデパートには、『イン』というコーナーがあり、『ビー・イン』などもあったりして、流行しました。だから、インナーのトリップの世界を、皆求めたわけですよね。ビーチ・ボーイズの音楽もそうだったわけですよ。絵葉書で、「Surfin' USA」に親しんだ我々は、付いていけなかったわけです。

アルバム『Pet Sounds』から「Caroline, No」。これはシングルとして、ブライアン・ウィルソン名義で発売したものです。「Surf's Up」は、実はボツになったあのアルバム『Smile』からのナンバー。ボツになりましたが、後になって発表されるわけですけども。

レコード会社はね、『Pet Sounds』は大失敗だったと判断を下すわけです。メンバーの半分以上もそう思っていた。録音に、当時のお金で7万ドルもスタジオにかかったということは、大変なお金をかけているわけですよね。

その頃はね、ロックの評論というものが1つの文化だったんですよね。今でも他の資本に売られて続いている、『ローリング・ストーン』という雑誌や、それから、ポール・ウィリアムスという評論家が書いていた『クロウダディ』という雑誌なんかは、その中で、いかにビートルズが偉いか。

そしてビートルズと同じように、ビーチ・ボーイズが偉いかということが、よく書かれていました。ビーチ・ボーイズの凄さっていうのがね。だけど、我々や、レコード会社の連中は、ピンとこなかったわけですよ。仕方無いですよね。そして、その『Pet Sounds』から、『Smile』の制作に移るんですが、レコード会社が完璧に見向きもしてくれないし、ブライアン・ウィルソンもボロボロな状態になるんですよね。


1966年の「Good Vibrations」は、誰もが認める凄い曲ですよね。1回聴いただけじゃあ分からないような凄い曲ですよ。もちろん取っ付きはいいわけですよ。ですが、聴けば聴くほど、「色んなことをやっているんだなぁこの人達は。凄いんだなぁ」、というのが分かるという曲です。この曲なら、ブライアン・ウィルソンの中を、覗くことが我々にはできたわけですが、他の曲はちょっと無理ですよね。

この曲が大ヒットしたのは、音楽的な深さや色々な冒険もあったけど、マイク・ラブが歌詞を作ってね、このマイク・ラブが絵葉書的なビーチ・ボーイズの詩にしているわけですよ。

Good Vibrations」という単語は、先程も言いましたが、<イン>という流行語もあったし、<Vibrations>というのは、「Vibe」とかで、現在でも使いますが、この頃出てきた言葉ですよね。それをもろに曲にしてしまったわけですよ。それから、サビでは、「Good Vibrations、Excitation」のような、新しい言葉を作ったりと、結構幼稚な感じですが、こういったものが、音楽的な難解さと中和されて、ヒットしたんじゃないかと言われています。

チェロが入っていたり、テルミンという変な楽器が入っていることはお馴染みですよね。この曲を聴いた時に、ポール・マッカートニーは、「俺達ブライアンに負けた!」、と思ったらしいですよね。しかし、それをエネルギーや燃料にして、ビートルズ達は、『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』や、後の作品に向かうわけですけども。

その後、壊れてしまったブライアンの情報は、時々、色々なところから伝わってきましたが、なかなか回復してこないんですよね。身内でのトラブルがあったり、セラピストが財産を盗もうとしたり、色々なことがあって、完全復活というのが、なかなか出来なかったのですが、完全復活したのが、1995年に、以前ボツになった、『Smile』のアルバムで組んでいた、ヴァン・ダイク・パークスと再び一緒になって、彼が出てきたことからになります。

ヴァン・ダイク・パークスのアルバムに、メイン・ボーカルとして参加という形でしたが、彼は復活します。それがこの「Orange Crate Art」という曲です。

『Orange Crate』というのは、日本語で言うと、『みかん箱』ですよ。木で作ったみかん箱って知っていますかね。そこにチープなみかんの絵が入っていたわけですが、アメリカのオレンジの梱包用の箱には、ヤシの木や海岸線が書いてあって、そういったビジュアル的なものを、コンセプトとして、ヴァン・ダイク・パークスが作ったということで、これはかなりいいアルバムなので興味のある方は是非聴いていただきたいと思います。

このようなビジュアルというのは、以前に流行りましたが、日本では、細野晴臣の「Yellow Magic Carnival」なんかがありました。そう言えば、山下達郎の『スマイルカンパニー』という会社は、ボツになった『Smile』のアルバムに敬意を称してそう呼んでいるわけですよね、ふと思い出しましたが。

1番新しいアルバム『That Lucky Old Sun』を、最初から聴いていくとね、裸のビーチ・ボーイズが見えてくるんですよ。後半になるとね、ビーチ・ボーイズの本当の姿を見ようと、探ろうとした人にとっては、目から鱗のことのように、ブライアンが丁寧に話をしてくれるんです。そして、その音楽もそうなんです。ですから、最新アルバムは、後半が特にオススメなんですよ。

アルバム『That Lucky Old Sun』から、最後の2曲である「Going Home」と「Southern Califirnia」。これで、ハッピー・エンディングみたいに、ブライアン・ウィルンンのことがよく分かります。このアルバムはね、色々なことを解き明かしてくれるんですよね。歴史絵巻ではなく、個人的なことを歌っているのに、まるで歴史絵巻みたいに、最後は明るくなっていくんですよ。これは面白いですよね。

僕達は、ビーチ・ボーイズの初期の頃の作品は凄いと思ったし、ビートルズなんかは、「『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』最高!」なんて思ったけれど、『Pet Sounds』を理解してあげなかった。宿題をやり忘れた感じですよね。今回のニュー・アルバムはね、夏休みの宿題しないまま、夏休みの終わりに、自分の年上の従兄が来て、パッパッパッパッと宿題を手伝ってくれて完成みたいな感じがしましたよ、僕は。


因みに、『Pet Sounds』は、1966年の発売から、30数年を経て、ゴールド・ディスクになっています。昔の画家が認められなくて、死んでから認められたような、そんなことを少し思い出してしまいますが。

「Oxygen To The Brain」は、ニュー・アルバムの真ん中の後半辺りに出てきます。それまでの、楽天的なものが、急にポジティブになってくるんですよ。「今までは、何で俺はこんなに暗かったんだろう、さあ、胸一杯に大きく空気を吸って、頭に酸素!酸素!」と。ブライアン・ウィルソンにしては、元気を付けてくれる、まあ、ビーチ・ボーイズ自体はね、僕達に凄い活力を与えてくれたわけですが。












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