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カズン
2008年12月2日火曜日,11:36




手帳を選ぶ際、その自由度と枠組みとのバランスが、一つのポイントなんでしょうか。

 糸井「そうですね。そもそもなぜ手帳が必要なのかという話をすると、みんな一人で生きているわけではない、誰しも社会とつながって生きている、ということが根本にあると思います。

もし一人で生きているのなら、手帳なんて書く必要はありませんから。その状況は自由ではあるけれど、怖いことですよね。そして、現実には、みんな他者との関係の中に存在している。

自分だけの世界と、社会という群れとの関係と、それが自由と枠という関係なんだと思います。手帳に時間があったり、日付があったりするのは、自分が他人と一緒に生きていることの証拠なんです」



手帳は、群れのためのものだったのですね。

 糸井「そうです。元々、手帳というのは、何時に何の予定があるか、というのを確認するためのものでした。つまり他人との関係だけで成り立っていて、自分の自由な部分はほとんどなかった。

それは、辛いことだと思うんです。昔、携帯電話が普及する前、ポケベルってあったの知っていますか。あれを会社に持たされていた人は、『オレは人に必要とされている』と喜んでいる人がいる一方で、『こんなものを持たされている』と怒る人もいました。

元々、手帳にもそんな要素があって、『あんたの自由には生きちゃいけないんだよ』といっぱい書いてあったわけです。でも、ほぼ日手帳を使ってくださっている人のなかには、日付があるのを無視していろんなものを貼っている人がいたりします。

ほぼ日手帳は、個人のためのホワイトスペースをたっぷりにして、『あなたはどうしますか』と質問しているような手帳なんだと思います」



 そんなホワイトスペースに代表される「個人性」と、時間枠に代表される「社会性」の間にいろんな手帳があるんですね。

糸井「例えば『超整理手帳』や『能率手帳』は社会寄りでしょう。『夢がかなう手帳』にしても、テーマは他者との関係だから社会性は強い。

その点、僕らは、最初から『ほぼ』と書いてしまっている(笑)。個人寄りというか、ほかの手帳とは比べようもないというか...」


 でも、社会との関係も意識していますよね

糸井「そうなんです。『日』というのは社会ですから(笑)。ほんとは日付がなくて全部白紙で、みんなが自由に振舞って、それでも上手くいく社会は理想です。そんな夢の国を思い描きながら、でも実際にはこれくらいじゃないかという判断をしているんでしょうね、僕は。

だから、ほぼ日手帳を僕らの想像以上に自由に使っている人を見たときにうれしくて笑いがこみ上げてきます。でも、白紙だと、きっと励みがないんじゃないかと思うんです。

寝て起きてというリズムは意外に重要。そういう公と私が程よく交じりあって生きている人は、この手帳が手放せなくなるみたいです」


ほぼ日手帳は文庫サイズなので、他社の文庫用カバーが使えますよね。

 糸井「そうなんです。それで、僕もこれにしちゃおうかな、と思ったカバーがあるんです。アンリ・クイールさんの、職人仕事で作っていく文庫用のブックカバーなんですが、クイールさんに会ったその日に買ったので特に愛着があって、そのために、ペンを差すための補助的な文具とかも買って、使ってみようと思ったんです。それで、しばらく使っていて、会社の子達も「それいいな」って言っていたんです。

でも、1カ月ちょっとで『ダメだ』ってなってしまいました。モノが挟みこめなかったり、手に持ったときにかさばり感があったりしたことも原因ですが、何より頼りにできなかったんです。ほぼ日手帳のカバーにはいろんな機能が付いていますが、それらはみな、ほしくて付けた機能なんです。ポケット一つにも理由があって、それがないだけでダメなんです。

まだ10年にも満たないんですけど、だてに毎年改良していないなと、自分で分かりました」



 アンリ・クイールさんのブックカバーの質感と見た目はとてもよかったですよね

糸井「そうです。でも、それだけじゃダメなんですね。それともう一点、手帳の表紙とカバーとは一体感が必要だと分かりましたね。紙の表紙とカバーとの一体感は、スペックでは表せませんが、ほぼ日手帳のカバーは、それを大事にしています。別のメーカーのものだと、どこか繋ぎあわせた感じになるんです。自分たちで使っては、こうしたいああしたいというアイデアをためていって作った、集大成みたいなカバーですから、手帳との馴染み具合もいいんでしょうね」

 カバーと中身合わせてほぼ日手帳ということでしょうか。

 糸井「最初からそのつもりで作ってました。極端に言うとはめ込み式でなく、カバーごと一緒に製本してもいいくらいのつもりで出していたので、本体という言い方は今でも抵抗があります。

もっと言うとレフィルと言われるのもちょっと抵抗があります。そういう意味でも、カバーはオプションではないんです。そこは、僕らにとって、とても大事なことだと思います」



この大きなサイズの「ほぼ日手帳COUSIN」は、糸井さんにとって、どんな手帳ですか?

 糸井「仕事のパートナーの前で開いて、説明するための紙は、もっと必要だと思っていたんです。僕はよくミーティングで、『なんか紙ない?』と言うんです。ノートを持っていても、あっちこっちのノートを使っているからバラバラになって、なんだか分からなくなっちゃうんですね。

プロジェクトごとにノートを作るのも、片付けるのが得意な人でなかったら使いにくいんですよ。だから、なくさない理由のあるノートが欲しかったんですね。それで、ほぼ日手帳の紙質、綴じ方を活かしたノートを作ったらどうだろうと思ったんです。

ものすごく高くなっちゃうけど、ノートだけでなく、第2の機能として手帳としても使えたらなくさない理由にもなる。実際、この大きさは使うといいですよ。これ以上大きいと持ち運びがたいへん。バックに入る、ぎりぎりのサイズにしたんです」


従来の「ほぼ日手帳」に比べて、COUSINは中のフォーマットも個人より社会側に寄った作りになっています。それは、人とのつながりをより重視したものだからですね。

 糸井「特に仲間ですね。COUSINに、こっそりと自分の考えを書くなんてことはあまりないと思うんです。ほぼ日手帳だったら、手のひらの中に入りますから、こっそり個人的なことを書きやすい。

だから、『年上のいとこ』なんです。ブラザーとかシスターとか言わずに『いとこ』といった理由は、久しぶりに、いとこと会ったら、いろいろ勉強になったよ、というイメージですね。兄弟だと家で会うけど、いとこは外で会う、という感じです」



 だからCOUSINは、ちょっとだけ大人っぽく、社会人っぽくなってるんですね。

 糸井「COUSINの場合、グループごとの手帳にするというやり方もあるんですよね。週番みたいな人が日誌を付けるみたいな、あの発想ってもっと企業でやってもいいかなって思いますよ。

そこで共有できるアイデアとか確認事項がこの中に入っていたり。それを手で書くというのが結構重要じゃないかと思って。肉筆が動いていくというのは、人の動きを見るのと同じで気持ちいいんですよね」


 手帳として、さらに別のバリエーションを出す予定はあるんですか?

 糸井「いろいろやりたいとは思っています。でもそれ以前に、ウチで出している『ホワイトボードカレンダー』は、COUSINの姉妹品だと思ってます。

我が家は共働きですから、何かの振込みから、ロケの予定から、ホワイトボードカレンダーに書いたり消したりすることがものすごく大事なんです。

もう手帳なんです。何時から散髪屋って、うっかりすることがないように書いたりします。かみさんに『あんた散髪屋じゃないの』って言ってもらうために書いたり(笑)」

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